セシエルはビシィッ! とベリルに指を指して言い聞かせた。

 ベリルはそれに『はいはい……』と、溜息を漏らす。

「どういう事なんだ?」

 呆れた表情のベリルに、ドルメックは小声で訊いてみた。

「あー私がいれたものの方が美味いと言われるらしくてね」

「そ、そうか……」

 そう言われると、ベリルのいれた飲み物も飲んでみたい気がするけど……

「ほい」
「はい……?」

 何故か手の上に小さな紙袋。

「アップルパイも焼いていたのだが、可愛いお嬢さんたちに食べられてしまった。クッキーは少し残ったのだ」

 実はエナにクッキーの存在もかぎつけられ、あらかた持って行かれた。

「じゃあ礼に」
「クッキーごときでいらん……」

 ベリルはティポットのミントティを自分でカップに注ぎ、ドルメックを見やる。

「私たちの間で、貸し借りなどと下世話な話は無しにしろ」