「あんた昨日、俺の母親がマジックアイテムの補助をしてくれてたって言っただろう?」

「うむ」

「代わりになるか分からないけど、俺が持っている物の中で使えるのがあったら貰ってくれ。借りは作りたくないんだ」

 その言葉に、ベリルは苦い顔をする。

「貸し借りは無しだ」

「いいから持ってってくれ。どうせ俺には使えないシロモノだし」

 でなきゃ、俺の気がすまない。言われてベリルは、マジックアイテムを見つめる。

「……」

 ベリルは1つ、宝石を手に取るとドルメックに目を移した。

「お前の母を、少しお借り願えないか」
「え? ああ」

 ベリルの手にエメラルドを乗せる。それを優しく手に包むと目を閉じた。

「!」

 その手から、淡い緑の光が一瞬広がった。

「あんた、民の雫を使えるのか!?」
「ん? いや。使ってはいないが」