「あまり善い者ではなかったから、私が持っていた方がまだいいと思ったのだ」

 渋々、私に渡したよ。ベリルは目を細めて笑った。

「……」

 なんてこった! こいつは、俺の代わりに取り返したんじゃないか!

「俺の民の事、知ってるんだな」

「ん……旅をしていると、そういう話も耳にする」

 その言葉のあと、ベリルは少し眉をひそめた。

「もしかして……」
「え?」

「昨日、私が物扱いした言い方で怒っているのか?」

「へ? いや……」

「私は別に物扱いした訳ではないぞ。単にその時の事を率直に言っただけだ」

「……」

 気にしてたんだ……

「プッ」

 ドルメックはおかしくなって吹き出してしまった。