“コンコンコンコン”

「! はい」

 セシエルが朝食を終えて飲み物でもいれようとした時、ドアが叩かれた。

 入ってきたのは見慣れない青年。

「えと……ここは流浪の民の部屋?」
「ああ、うん。そうだよ」

 赤茶色の髪の青年はセシエルをちらりと見ると、

「……ベリルって人は」
「! ああ。今、ちょっと出てるよ」

 青年の目に、複雑な色が宿る。会いに来たけど、いなくてほっとしてるって感じかな?

 セシエルはそう思って、ニコリと笑いかけた。

「まあ、すぐ戻ってくるだろうからさ。何か飲んで待ってなよ」

「え、ああ」

 いぶかしげに返事を返す。

「俺はセシエル。ベリルのサポートね」
「あ、俺は……ドルメック」

 セシエルはいつもの微笑みでドルメックに近寄ると、何の警戒心もなく手を差し出した。