「ちょっと! 私が先よっ」
「何よ!」
「何よ!」

「……」

 ベリルは右手で顔を覆って溜息を漏らした。

「私は自分の家で良い」
「だったら私が食事作ってあげるわ!」
「私がやるのよ」
「私よ!」

 ベリルは睨み合う女性たちに呆れて、目を据わらせた。

「食事も自分で作る。用がある時は私から声をかけるから」

「そう?」
「いつでも言ってね!」
「私も私も!」

 笑顔で離れていく女性たちをセシエルは見て、ベリルに目を移す。

「恋人の1人も作らないからだ」
「ほっとけ」

「そのうち、殺し合いしかねないぞ」
「止めてくれ……」

 その整った顔立ちと、独特の雰囲気は女性たちを魅了する。

 彼が集落に戻ると、こうしてしょっちゅう争奪戦が繰り広げられるのだ。