「私マルティエーラ。マルタでよろしく。こっちはエナで、あれがユリエス」

「おいっ俺は『あれ』呼ばわりかよ!」

 3人のやりとりに、ベリルはクスッと笑った。

 オレンジペコをティカップに注ぎ、アップルパイを切り分ける。

「私はベリルだ。月灯の民は解るとして、そちらのお嬢さんは?」

 その言葉に、マルタはピクリと反応する。そしてベリルを少し睨み付けた。

「討伐隊のメンバーだよ。そう怖い顔をしないでくれ」

「えっそうなの? なんだ……」

 そんなマルタの心配をよそに、エナは目の前のアップルパイだけに集中している。

「っていうかエナさん。アップルパイに夢中っすね」

「大丈夫。この人に『邪気』は無いから」

 渡されたフォークを素早く持つと、アップルパイに突き立てた。

 一口食べて、幸せな顔をする。と、いってもそれが解るのはマルタだけのようだが。