「ハッ! ちょ……エナ」

 マルタが慌ててエナに駆け寄る。

「あ、あの~」

 ここは一発、何か言って誤魔化すしかないか?

 マルタはそんな考えでその青年、ベリルを見つめた。しかし、先に口を開いたのはベリル。

「これは可愛いお嬢さん方だな」

 ベリルはニコリとマルタに笑いかけた。

「これ、あなたの?」
「気分転換に作った処だ」

 それを聞いた金髪の少女は、大きなリアクションで後ずさる。

「おおっと! これは意外な返答! まさかの手作りっすか!?」

「……」

 そのリアクションに一瞬、ベリルは目を丸くした。そしてすぐ、目を細めて笑顔を見せる。

「1人では多いと思っていた。一緒にどうかね?」

「エナはむしろ食べるつもりだったみたいだけどね」

「……」

 黒髪の少女は、すでにアップルパイの置かれているテーブルに腰掛けている。

「では、飲み物をいれている間に名前を聞いておこうか」

 ベリルは言って、ティポットを取り出した。