[大事ないか]

 ベリルの声に緊張が解けたのか、少女は顔をくしゃくしゃにしてその胸に飛び込んだ。

 転けたのだろうか、少女の膝から血が流れていた。

 ベリルは持っていたバンダナを取り出し、女の子の膝に軽く巻き付けた。

 藍色のバンダナが気に入ったのか、少しの笑みを見せるが未だ泣き止む気配はない。

[ここから離れよう。いいね]

 少女は泣きじゃくりながら頷いた。

 しかし、その足は震えて走れそうにはない。

 小さな子どもが走るには足元もままならない。

 ベリルは少女を抱えて注意深くその場から遠ざかる。

 まだ早い──そう感じた刹那、ぴたりと足を止めると右から眼前を銃弾が横切りコンクリートの壁に無数の穴を空けた。

[首にしがみつけ!]

 その声に少女はベリルの首に必死に腕を回した。

 ベリルは少女を守るように敵に背を向けながらハンドガンを手にして、その頭を狙う。