次に、少しだけ具を乗せて口に含むと、時間をかけてしっかりと噛みしめた。

 充分に噛み砕いたというのに、それでもゆっくりと慎重に飲み込む。

 男はその様子に感心した。

 見たところ、最後に食べ物を口にしたのは数日前のようだ。

 そんな状態でいきなり食べ物を胃に入れれば、胃が驚いて食べ物を受け付けず折角食べたものを吐き出す事になる。

 カイルはそれに、笑って説明してやろうと思っていた。

 しかし、少年はその知識を持ち的確に対処している。

 こいつ、ただのガキじゃねぇな。

「名前は?」

「ベリル、です」

 少年は少し戸惑いながら名乗った。

「そうか。俺はカイルだ」

 立ち上がって地面にしゃがみ込むと、座っていた倒木をまな板代わりにウサギを解体し始める。

 それを眺めながら、ベリルと名乗った少年はスープを口に運んだ。