知識があるのなら余計なことはしないだろう。

 現に、基地に入り兵士と接しても妙な動きはまったくしていない。

 外の景色はベリルにとって全てが新鮮だろうに、おそろしい適応力だとカイルは改めて感嘆した。

 感情表現が薄いことも助けにはなっているのかもしれない。

 尋ねると、本来なら体で喜びを表現するようなものでも、落ち着いた言葉が返ってくる。

 それで、感動していない訳じゃないのかと知る。

 一見すると冷徹な人間に思われるだろう。

 しかしその実、訊けば感性豊かだと解る。

 それを考えると、やっぱりこいつは自分の感情を表現するのが下手くそなんだろう。

 感情を押し殺して教育されていた訳じゃないだろうに。

 自分の存在にどこか負い目を感じていたのかもしれない。

 飛び抜けた洞察力のせいで悟りきった結果、落ち着いた性格になった。

 そう見る方が妥当だろう。