「こっちは今はちょっと無理だ。国境を越えるなら手伝えるが」

「ふむ」

「在独米軍に連絡しておく」

 そこからベルギーに入って海に出ればいい。

 さすがに戦力が削減された在独米軍にアメリカまで飛んでくれとは言いづらい。

 それを知っているコンラートは海までのルートを提案した。

「海か」

 アルカヴァリュシア・ルセタはヨーロッバのほぼ中央に位置しているため、海に面した土地がない。

「それでいこう」

 海を間近で見せられるとコンラートの提案に従った。

 それから車に乗り込み、空ではなく船の旅になったことを伝える。

「海ですか」

 薄い表情に輝きが見て取れる。

 しかし、渡されたものにいぶかしげな顔を向けた。

「UVグラス?」

 色はついていないが、何故こんなものを?

「覚えられたくねえだろ」

 カイルは自分の顔を指で示す。