「世界は広いからな。暇があれば飛び回ればいい」

「あの」

「なんだ?」

 何か気になることでもあるのかとベリルを一瞥する。それとも、行きたい場所が他にあるのか。

「一つ、問題があります」

「なんだよ」

 折角のテンション下げるなよと眉を寄せる。問題なんて大ありだろう、今さらどうした。

「パスポートがありません」

「あ──ちゃあ」

 そうだった。こいつ、出生証明書もねえのか。

「どこの国がいい」

「え?」

「生まれだよ」

「ああ」

 明らかに偽造目的の質問にとぼけた顔をして、

「ヨーロッパのどこかなら」

「お前ならアメリカでもいけるだろ」

「そうですか?」

「好きなとこにしろ」

「好きな所と言われても」