──カイルはオーストラリアに向け、空港に車を走らせた。
助手席のベリルは、昨日よりも晴れやかな表情をしている。
こいつならきっと、あの大地を気に入るだろう。
カイルは目を細め、荒れ地と自然公園に砂漠、そして精霊の宿る大地を思い浮かべた。
かつては、差別のあった時代も戦いもあった。
イギリスから独立して未だ浅い歴史だが、不屈の精神も宿っている。
「まずはシドニーだ。オペラハウス。見たいだろ?」
「はい」
「固有種も面白いぞ。それにウルルにバリングラは──まあでかい」
言ったあとで若干の後悔が過ぎる。
世界一位と二位の一枚岩は、期待と実際に見た感覚のギャップが大きい。
大抵は期待度が高くてがっかりする。
まあそんなもんだろう。それもまた自分の肌で感じるものだ。