「ええ、そうでしょう」

 そう応え目を伏せて次の言葉を探す。

 迎えが来れば、再び研究が始まるかもしくは、死ぬまで外に出ることはないだろう。

 襲撃を受けたことで、研究データ流出の危険性を問題視し、危険だと判断されれば殺されるかもしれない。

 しかれど、そのどれもがベリルをその場所から引き離す理由ではなかった。

「触れたいと思う世界が、目の前に広がっていると気付いたとき──」

 私の足は施設から遠ざかっていた。

「施設から離れれば離れるほど、心は躍りました」

 それでも、すぐに連れ戻されるかもしれないという恐怖が立ち、捜索を困難にするために森の中を動き回った。

 まだ少し、もう少し先を見たい。あと数メートル、あと数十メートル。

 もっと、もっと遠くを──