「誰もお前を追ってこないのか」

 どう考えても、政府にとって外にいることは認められない存在だ。

 それなのに、探し回っている気配はない。

「ブルーは、私のデータをベルハースたちが消去していると」

 ベリルという名も、政府には伏せられていた。

 カイルはそれに驚きを隠せない。

 国家機密の施設内部なんて、どうなっているのかは解らない。

 しかし、施設にいた全員が、こいつのために最期は動いていた。

 そんなことがあるのか。それとも、こいつの存在がそうさせたのか。

 アルカヴァリュシア・ルセタは、倫理的に見ても問題のある実験を行っていた。

 データがなくなっているのなら、全てをもみ消すには好都合だ。

 捜索で他国やマスコミに感づかれるくらいなら、なかったことにしようとしているのかもしれない。