「新月じゃねえのはちょいと残念だが、綺麗な星空だ」

 笑みを浮かべるカイルの横顔をベリルはじっと見つめる。

「カイル」

「なんだ?」

「母上はどうされていますか」

「お袋? 病気でとっくに死んじまったよ」

「そうですか」

 それがどうかしたのかとベリルに目を移す。

 星空を仰ぐその瞳には、どこか複雑な色が見え隠れしていた。

「お前、親は?」

「いません。初めから」

 初めから? 妙な物言いに目を眇める。

「じゃあ、育ての親は」

 その問いかけに、ベリルは上半身を起こした。

「ベルハース教授です」

 学者に育てられたのか? それで物知りなのか。

「授乳期には授乳役の女性がいたそうです。他に、サイモン教授、ランファシア教授、アントーニ教授、アベル教授、ブルーノ教授──」

「おいおいおいおい。どんだけいるんだよ」