「あなたがいる世界を、より知りたい」

「俺の弟子になりたいってことか?」

「そう受け取って構いません」

 それにカイルは鼻で笑う。

「がらじゃねぇ。他をあたりな」

「誰か紹介していただけるなら」

「紹介?」

 こいつを?

 いやまて。こいつは謎が多すぎる。

 紹介しても敬遠されて、まともに教えてもらえるか解らない。

 確かに、傭兵としての適正はある。

 むしろ十分過ぎるくらいに。

 しかし、なんだろう。この違和感は──

 言いようのない感覚がカイルの全身を支配した。

 こいつは死にたい訳じゃない。

 だが、死に場所を探しているような、妙な感じを受ける。

 駆け足で死に向かおうとしている。そんな感じだ。

 死にたい訳じゃない人間が、思う通りに死ねるとは限らない。

 だったら、こいつの運に賭けてみるのも悪くない。

 自分の心の奥にある感情に自然と笑いが込み上がる。

 そうだ、俺はこいつを育てたい。

 そんな感情が止めどなくわき出てくる。

 こいつの素質は、ほんのわずか見ただけでも計り知れない。

 鍛えれば、それに比例して際限なく強くなるだろう。

 恐ろしいほどに、それがひしひしと伝わってくる。

 俺は、それが見たくて仕方がないんだ。

「とりあえず。腹が減った」

「はい」

 二人は夕食の準備を進めた。