「っ!?」

 茂みの中から声が聞こえて少年は体を強ばらせた。

「いいんだぜ。遠慮しないで食べていけよ」

 バサバサと葉を揺らして男が現れる。

 いま狩ってきたものだろうか、その手にはウサギがぶら下がっていた。

 絞めてきたばかりでまだ血がしたたっている。

「あ──」

 少年は突然現れたその男に目を丸くした。

 男に敵意がないことを感じたのか、逃げ出すこともなく男の全体をマジマジと眺めるその瞳は、やはりどこか輝いているようにも思える。

「あん? 俺の顔になんか付いてるか?」

 男は少年を警戒するでもなく、焚き火の側にある倒木に腰を落としあごをさすった。

 年の頃は三十代前後だろうか、深緑のミリタリー服に身を包み、硬い漆黒の髪に空のような青い瞳には弱々しさは感じられない。

 少年はふいに、男の脇に置いてあったライフルを見つけ瞳を険しくした。