そんな風に言い聞かせた時期があったのだろう。

 今でこそ、納得の出来る部分はあるにしても、幼かったあの頃のカイルには到底、理解できるものではなかった。

「親父から色んなことを聞いて学んだ。軍人というものに憧れていた。それを今更、親父が死んだからって逆転させられるほど、俺は賢くなかったのさ」

 父の同僚たちはとても優しく、カイルを自分の息子のように可愛がってくれていた。

 それでどうして何かを、誰かを憎めるだろうか。

「で、初めは軍に入った。けど、これが俺のしたいことじゃないと感じて傭兵になった」

 辺りはすっかり暗くなり、バーナーの炎が二人の顔をオレンジに照らす。

「戦いでしか救えない命がある」

 ふとつぶやいた言葉には、とても重たい感情がある事をベリルにはよく理解できた。

「悲しいことだけどよ。それが現実」

 だから俺は、傭兵になって良かったと思ってる。