「まあなんてえか。爆発で木っ端微塵になっちまったらしくて、骨も持って帰れなかったそうだ」

 手にしたのは子どもの手にも収まる、ちっぽけなドッグタグ。

 あんなに大きかった親父が、こんな小さなプレートになって戻ってきた。

 そのときの感情は、どうにも言い表せないものだった。

 本来ならば、父親を死に追いやった戦いや兵士を憎んでもおかしくはない。

 しかし、カイルは違っていた。

「親父はいつも、国を守るために戦うことは素晴らしいと言っていた」

 他国の紛争に国を守るという意味はあるのだろうかと思うかもしれないが、軍が守るのは今や自国の市場(しじょう)なのだ。

 紛争の原因は利権絡みによるもので、その国には豊富な資源があり、こちらが支援する側が勝たなければ色々と問題となっていた。

「正しい戦いだったのさ」

 そう語ったカイルの表情は、納得のいくようなものではない。