無謀というか馬鹿というか。

 呆れて物も言えねえ。

 このガキには、ある程度の勝算が見えていたのかもしれない。

 それでも、死ぬ確率の方が高かっただろう。

 そうだ、死ぬかも知れなかったあの瞬間には、遂行開始直前にあった震えも複雑な瞳の色も映し出されてはいなかった。

 じゃあ、こいつの恐怖とはなんなんだ?

「カイルは何故、傭兵に」

「なんでかなぁ」

 とぼけてコンロの炎を確認する。

 傭兵は特殊な職業だろう。

 気になるのは当然か。

「今さらで解っちゃいると思うが、俺はアメリカ人だ」

 ノースカロライナ州のフェイエットビルで生まれ育った。

 イギリスの植民地化されるまでは、先住民の文化が長く続いていた土地だ。

「親父は陸軍にいてな。俺がガキの頃に、どっかの国の紛争の鎮圧に駆り出されて、そのまま帰ってこなかった」

 ベリルはそれに眉を寄せた。