カイルは焚き火ではなく、持っていたアウトドア用のガスコンロに火を付けた。

 幾つか持っているようで、一つには米を炊く容器が乗せられる。

「そっちのコンロでスープを作れ」

 ベリルは仕方ないと溜め息を吐いて材料と鍋を受け取った。

 調理の様子を覗くと、見事な手際の良さにカイルは目を丸くする。

 御飯が炊けるまでのあいだ、カイルは調理をしているベリルを見つめた。

「なあ、お前」

「はい」

「なんであいつの前に出た」

 引鉄を絞ればそれで終わりという状況で、死の恐怖よりも勝っていたものはなんだ。

「解りません」

「死ぬとは思わなかったのか」

「いいえ。可能性はゼロではなかったでしょう」

 しかし、彼が目の前で誰かの命を奪うことに、とてつもない違和感を覚えた。

「ただ、それだけです」

「へえ」

 それだけで、あんなに動けるもんなのかね。