「ここから一番近い町でも半日はかかる」

 それについての躊躇いはないようだが、車を降りたあとにどうすればいいのかを思案しているようだった。

 しかし、家出少年が持つような不安な面持ちは見当たらない。

 このガキは本当に、ただ単に行く宛がないだけなのか。

「そろそろ夕暮れだな」

 つぶやいたカイルに目を向ける。

 陽はまだ高いものの、差す光にはこれから訪れる夕闇の気配が混じっていた。

「よし。今日はここで泊まりだ」

 ベリルの返答も聞かず道路から外れて平原に入る。

 そうして車を駐め、ドアを開いて外に出た。

 後部座席の扉を開き、そこにある荷物を手に取る。

「おら、手伝え」

 黙って見ていたベリルにあごで示し、飯ごうの準備を始めた。

 こちらの言葉を聞く気はないらしいと眉を寄せ、カイルの言葉に従い外に出る。