確かアルカヴァリュシア・ルセタは、ハイスクールまで義務教育だったか。

 大学の学費もかなり免除されている。

 主な輸出が科学技術というだけあって教育には熱心だ。

 総人口がそう多くはないとはいえ小国でのそれは、かなり財政を圧迫している。

 このままではいずれ、義務教育の範囲も狭められるだろう。

 ガキは勉強をするのが仕事だが、こいつの言う仕事という言葉の意味合いには、どこか引っかかるところがある。

「無理に話さなくてもいいんだぜ」

 カイルの言葉に喉を詰まらせる。

 目を泳がせて次の言葉を探すが、どうにも見つからないようだ。

「止めてもらえますか」

 小声で発する。これ以上、話すことを諦めたのか。

 カイルはその通り、ゆっくり車を止めた。

 ハンドルに両腕を乗せ、目を伏せて黙ったままのベリルを見つめる。