「人種至上主義者がまだ多く存在する国ですね」

「んあ? 俺にはそんなことわかんねえけど、あそこはいいぞ。アボリジニたちの精霊が宿る大地だ」

「精霊──」

 思いもかけない返答だったのか、切れ長の目が丸くなる。

「そんなの信じねぇか?」

「いえ、すみません。知っている知識だけで発言しました」

「お前、物知りだね」

「それが仕事でしたから」

「仕事?」

「施設では多くのものを学んでいました」

 カイルはそれに目を細める。

 未だ心を開いているようには感じられないが、少しずつでも自分なりに何かを見い出そうとしている事が窺える。

 ベリルとって、それは辛いことなのか。瞳には複雑な色が見え隠れしていた。