「行きたい所はあるか?」

「私、ですか?」

 問いかけられるとは思っていなかったのか、やや驚いた目をした。

 ベリルにしてみれば、その変な邪魔の一つは自分なのだ。

「なんだ、無いのか?」

「いいえ」

 ベリルは一度、外を見やり、

「多すぎて決めかねます」

「言うねぇ」

 希望を讃えた瞳に口角を吊り上げる。

 こいつは自分の感情を表現するのが下手くそなんだ。

 それが感情が薄いという印象を持たれてしまう。

 いや実際、薄いのかもしれないが。今はまだそれを判断するには早すぎる。

「じゃあ、オーストラリアなんてどうだ?」

「オースト、ラリア」

 ベリルはそれに若干、眉を寄せた。