*仕事


 ──走らせる車の窓からは、延々と続くかと思われる小麦畑と草原に牧草地、時折遠方に小さな森を捉えることが出来た。

 カイルはベリルを一瞥し、

「怖かったか?」

「いえ、少しだけ」

「そうか」

 少しね。返ってきた言葉に薄笑いを浮かべる。

 それが本当なのか見栄を張っているのか、カイルには計りかねた。

 遂行開始直前、ほんの一瞬だがベリルの手が震えていた。

 目には恐怖とも武者震いともとれる感情を読み取ることは出来たが、どちらが勝っていたのかまでは解らない。

 子どもというものは図太くて繊細だ。

 自分の図々しさを理解しているカイルは、それだけに慎重にならざるを得ない。

「さてと。折角、のんびりしようと思ったら変な邪魔が入った。新たに目的地を決めるとするか」

 それに、さしたる反応を見せないベリルをちらりと見やる。