しばらく歩いていると、何やら良い匂いが漂ってきた。
こんな森の中でと疑問に思いながらも、少年の足は自然とそちらに向かう。
導かれるように、ふらふらと背の低い木々をかきわける。
そこに見えたのは、パチパチと音を立ててオレンジの炎を揺らす焚き火だった。
火の上には、小さめの鍋がちょこんと料理を煮立たせている。
焦げないようにと加減された火はとても暖かく感じられて、ゆっくりと近づく。
鍋の中身が見える距離で少年は喉を鳴らした。
見てくれはあまり良いとは言えないが、その匂いは空かした腹を刺激する。
すでに夕暮れどき、辺りを見回すが人の気配は無く少年はためらった。
でも、だめだ。少年は首を振り、物欲しげにもう一度スープを見て背を向ける。
「食べていかないのか~?」