──ベリルの行動で仲間にも相手にも思ったより死傷者は出なかった。

 とはいえ、敵の死者は十人ほどになる。

 現状を考えれば少ない方だ。

 落ち着いた頃、カイルはベリルを呼びつけて表情を険しくした。

「俺が言いたいことは解ってるよな」

「はい」

 いい返事だとカイルは右手を振りかぶる。

「お、おい。そこまでしなくても」

「こいつも解ってるんだしよ」

 仲間から口々になだめの言葉がかけられた。

「おまえら、そんなに子どもに甘かったか?」

 平手打ちをする手が泳ぐ。

 確かに、むやみに命を奪う事は避けられたが少年の勝手な行動は許されるものではない。

 仲間を危険に晒したことは事実だ。

 ベリルもそれを十分に理解しているため、動かずに殴られるのを待っている。

 何故だ? 何故、こいつはそれを理解出来る。

 実戦は初めてだと言っていた。

 シミュレーションや学んだ事だけで、どうしてそこまでの場数が踏める。

「はあ~」

 カイルは小さく溜息を吐き出すと、上げた手をベリルの頭に乗せ乱暴にわしわしとなで回した。

「殴らないのですか」

「俺が悪人になる」

 言ってジャンの元に向かった。