「シミュレーションを何度か」

 そんなカイルの表情にベリルは説明を加えた。

「ああ、なるほど」

 ──って納得出来ると思うか。

 そのシミュレーションとやらを、一体どこでやっていたんだ。

 そしてそのシミュレーションをしていた理由はなんだ。

「今から一時間後に決行だ」

 戻ってきたジャンがカイルに決行時間を伝えた。

「夜間ではないのですか?」

 ベリルは怪訝な表情を浮かべて問いかける。

 基本的には、こういった攻撃は夜間がベストなのだが、一時間後といえば昼を過ぎたあたりだ。

 カイルは、それを知っているベリルに眉間のしわを深く刻む。

「相手の方が俺たち傭兵より、夜間に長けているのさ。でかい家といっても、外に比べりゃ狭いことには変わりない。視界のおぼつかない夜間より、昼間を選んで戦った方が有利だ」

 ジャンの説明でベリルは納得する。