「はあ……。はっ──」

 少年は、薄暗い森の中で走り続けていた。

 まるで、何かから遠ざかろうとしているのか時折、木の根に足を取られながらも止まることがない。

 目指す場所があるように見えて、辺りを見回すその様子から迷ったのかあるいは、目的地は決まっていないようにも思える。

 少年は十代半ばだろうか、整った顔立ちに金のショートヘア、エメラルドのように輝く瞳は神秘性を滲(にじ)ませていた。

 身なりに見合わず切れ長の目に薄い唇、鼻筋の通った面持ちは誰もが振り返るほどなれど、その表情から感情はあまり読み取れない。