その銃口は急所を避けている。こいつらは俺を殺しに来た訳じゃないのかと眉を寄せた。

 ますますもって解らない。俺が何をした。

 男の指がゆっくりと引鉄を絞る。

 撃たれると思った瞬間──ラシードが突きだしていた男の腕を掴み、片足を蹴り祓って体勢を崩し一瞬、腰を落としてすぐに戻しその勢いを使って盛大に投げ飛ばした。

 予想もしなかったラシードの行動に、さすがのカイルも唖然とする。

「警察呼ぶ」

「お、おう」

 スマートフォンを取りに戻り、警察にかけるラシードを眺める。

「どこでそんなもの覚えた」

「ベリルに。いつも逃げられる訳じゃないからって」

「あのやろう」

 よくも黙ってやがったな。