「侵入する家を間違えてないか?」

 影はそれに答えずハンドガンを手にしたがカイルは素早く杖で強く弾き、ついでにゴーグルもはじき飛ばす。

 引退して長いが、鍛え続けているのはラシードを守るためだ。

 弟子になりたいと転がり込んだ少年であるものの、カイルはまだ早いと彼に何も教えてはいない。

 これからも教える気はさらさらない。

 いまは折角、医者になる方向に向いているのだから邪魔するんじゃねえと敵を睨みつけた。

 これでまた、傭兵になりたいと言い出したらベリルに合わせる顔がない。

「お前らを招待しちゃいない。今すぐ出て行け」

 左足はまともには動かないが、それに見合う訓練をしてきた。生憎と初対面の不躾(ぶしつけ)な奴に負けてやるほど、俺は優しくない。

 しかし、目の前の敵は怯むどころかカイルとやり合う気だ。