──深夜二時を過ぎた頃、カイルはいつもと違う空気に目を覚ます。
静けさのなかに、どこか張り詰めた気配が混じり合う。
肌にまとわりつくぴりぴりと緊張した感覚に、かつて味わっていた戦場での状況が脳裏を過ぎった。
ただの泥棒が纏(まと)うものじゃない。これは明らかに、戦う能力を持った奴が侵入している。
「何かしたか?」
どう考えても記憶にない。
とにかく、このままでは危険だ。
ラシードの部屋に行きたいが、相手は一人や二人じゃない。少なくとも五人はいる。
下に三人。階段に二人、上がってきている。
近いのは俺の寝室だ。ここで二人倒せばラシードが逃げる時間を稼げる。
何かあればすぐに逃げろと言い聞かせておいて良かった。