今ではそれもなく、几帳面なラシードのおかげで余計な仕事が一つ減ったと安心したものである。

 こなした仕事の報告は必ずしに来いというので訪問はしているけれど、こちらの感情をおもんばかってのことだろう。

 様子を見にくる口実を作ってくれるカイルの気遣いは有り難い。

 ベリルは諸々の事情により、人と深い関わりを持とうとしないため、そうでもなければいつか疎遠になる可能性がある。

 ラシードがそれを許さないであろうから、それほどの不安はないが疎遠になるのは互いに避けたいところだ。

「手伝おう」

「ベリル!」

 笑顔を向けたラシードに笑みを返す。調理中の食材を見回し、怪訝な表情を浮かべた。

「凝っているな」

「今日はベリルが来るって聞いたから」

 奮発しちゃいました。

 快活な黒い目がベリルを見つめる。少年にとって、ベリルはヒーローなのだ。