重い後遺症ではなかったためか、ベリルの適切な指導と正しいリハビリの継続で徐々に身体機能が回復し現在は杖さえあれば大抵のことは問題なくこなしている。

 同時に筋力を衰えさせないためのトレーニングでもあり、カイルらしいと思うと共におかしな事はしないようにと言い聞かせた。それでも、完全回復は望めない。

 ベリルもラシードも、カイルが保護者にはなっているが養子にはなっていない。

 カイルなりの考えがあってのことだろう。

「手伝ってきます」

「よろしくな」

 寝室をあとにして階段を降りキッチンに向かう。

 ベリルが十八歳で家を出て、在宅を始めたカイルが一人で暮らしていた頃には家中が散らかり放題となり呆れかえった。

 雑な性格をよそに、よくも動きづらい事を言い訳にしてくれたものだと半ば感心すらした。