「お前、なに吹き込みやがった」

「カイルは私の素晴らしい師匠だと」

「大法螺(おおぼら)吹きだな」

 なんだかんだと文句を言いつつも、カイルは少年を追い出すこともなく家に住まわせている。

 こうなることは当然、ベリルは解っていたから連れてきたのだ。

「お前より真面目だぞ」

「嫌味ですか」

「事実だ。昼飯食べていけよ」

「ありがとうございます」

 料理はベリルが教えているため、ラシードは立派に料理上手となった。

 通信教育とベリルが勉強を見ているという事もあり、少年の学力は飛躍的に伸びている。そうして勉強をすればするほど、少年の意識は変化してきていた。

「最近じゃあ、医療に興味があるみたいでな」

 ベリルがカイルのリハビリについて学び直している事も関係があるのかもしれない。

 つきっきりという訳にはいかないためラシードにも理解できる部分を教え、自分がいない間の看護を任せている。