男の銃弾はベリルの頬をかすめて後ろの壁に当たる。

[そうだ。それで、いい]

 カルナは胸を押さえ、満足げにゆっくりと倒れていく。

 呆然と見ていた残りのテロリスト二人はふと我に返りベリルに銃口を向けたが、待機していた仲間が飛び出してそれを阻止した。

 ぴくりとも動かなくなった男たちを確認し、仲間の傭兵たちは緊張状態を解いて安堵する。テロリストはこれで一掃された。

「人質を頼む」

 ベリルは仲間に指示をして、転がるカルナの遺体を見下ろす。

「何故だ」

 他に方法は無かったのか。こんな形を選択しなければならなかったのか。

 救いとはなんだ。これが彼の救いだと言うのなら、私がここにいる意味は彼の命を奪うためだったとでも言うのか。

「ベリル」

「よくやってくれた。撤収してくれ」

 入れ替わりに軍の兵士が建物に入っていく。

 ベリルは現れた政府の責任者に報告を済ませ暗闇にぽっかりと照らされた建物を最後に振り返り、目を眇めて帰路に就いた。