「決行は二十二時だ。準備を進めてくれ」

「可愛げねえな」

 遠ざかる背中にコニーがつぶやく。

「あったらあったで言うんだろ」

「まったく。綺麗な顔して度胸ある」

 ハサンは肩をすくめた。

「顔は関係なくないか」

「なんだよお前」

 いちいち言葉を挟むリデルにコニーはしかめた顔を向ける。

「いや。なんか気に入った」

 大勢での指揮は初めてだと聞いていたのに、それを感じさせないどころか歴戦の勇者ばりに落ち着いている。

「これなら、いけそうだ」

 経験不足の奴に指揮されて死ぬのはまっぴらだと考えていた。

 カイルについては、優秀な傭兵だったと聞き知ってはいても、弟子も優秀とは限らない。

 これは、ベリルという傭兵を広く知らしめるためのものだ。

 成功すれば、それなりに高い評価を得られるだろう。

 本人がそれを知り得ているかは解らない。その思惑があるにせよ、ないにせよ。

 成功させなければ、犠牲者が出るだけだ。