周囲の建物よりは立派だが、豪勢という訳じゃない。

 舗装されていない道と壁の色は大差がない。

 二階の窓にはすでにガラスもなく、厚いカーテンが重々しくかかっていた。

 ベリルは、立てこもっているテロリストを逃がさないために、前もって現地入りしていた仲間の一人に歩み寄る。

 見張りは一定の距離で四方を囲うように配置されている。

 塀がないため、一応は軍も協力はしているようだ。

 あちこちに銃を構えた兵士が見られた。

「状況は」

「芳(かんば)しくない」

 立てこもってから数週間は経っている。

 今日までに軽い銃撃戦はあったものの、大きな衝突はない。

「人質はまだ生きている可能性がある」

 武器をしこたま持って逃げ込みやがった。そのせいでむやみに突入できない。