「そういやあ。ここから歩いて一日くらいの所に、軍の特別施設があったな」

 そこから来たとも考えられる。──が、

「んな訳ねえか」

 こんなガキがなんだって軍の施設なんかにいる。

 この国には徴兵制もなければ、軍に入れるのは十八歳からだ。それでも厳しいテストを経て、ようやく予備軍人となれる。

 大量の兵士は必要がなく、それだけに兵士は厳選される。

 アルカヴァリュシア・ルセタは、そういう状勢と政権下にある国なのだ。

 少年の口調を思い起こす。

 あのたどたどしいしゃべり方は、間違いない。

「言語障害を起こしてやがる」

 言葉が上手く出せなくなるほどのショックを受けたんだ。

 バカ丁寧な口調の他に、子どもにしては妙なしゃべり方だし育ちも謎だ。

 どうしたもんかねとカイルはあごをさすった。