「医者になるって猛勉強しているらしいぜ」

 帰国の前に怪我の見舞いにと病院に行ったとき、少女は「助けてくれてありがとう」という言葉と共にベリルに自分が描いた絵を差し出した。

 花畑で少女とベリルが手をつないでいる絵だ。

 父親はすでに亡く、母親は少女の楽しそうな様子に微笑んでいた。

「生活費を送っているんだって?」

「あの子を元の場所に戻さないためです」

 それほど多くはない金額ではあるものの、その仕送りは少女にとって大きな助けとなっている。

「あしながおじさんか」

「手紙は求めていませんよ」

 それは冗談か本気なのかと困惑気味にベリルを見上げる。

 思えば、こいつと暮らし始めて三年近くになる。

 一度だけ、仲間の一人がこいつが怖いとつぶやいたことがあった。