「こええなあ」

 呑気に応えるカイルに呆れて溜息を漏らす。

 私が何も知らないとでも思っていたのだろうか。

 報酬のほとんどを仲間たちに支払っていることなど、とっくに気付いている。そのため、カイルの生活はそれほど良くはない。

 ベリルを加えたことで以前より取り分を増やしはしたけれど、仲間たちから聞けば相変わらずなようである。

 ベリルは一般的な生活水準も傭兵の平均も知らず、当初はこういうものなのかと気にしてはいなかった。

 やりくり上手であったため、カイルが一人で暮らしていた頃よりも貯金を若干増やせるくらいには余裕が出来ていた。

「ああ、そういえば」

「はい」

「二年くらい前に、お前が助けた女の子がいたろう」

「いましたね」

 確かアギフという名だった。