初めは森で遭難でもしたのかと思ったが、少年の服の汚れにカイルは眉を寄せた。

 あの汚れ方は、誰かと闘った跡だ。

 シャツに付いている血は誰かと格闘し、倒した返り血だと窺(うかが)える。

 気配の探り方と動きは訓練を受けた者のそれであり、洗練されていると言ってもいい。

 そもそも、どこから来たのだろうか。

 この近くには民家も山小屋も無い。

 家族がキャンプで来るような場所でもない。

 考えれば考えるほど不思議でならない。

 五日ほど森を彷徨(うろつ)いていたとは言っていたが、この森は迷うような森じゃない。

 方位磁針も地図も手に入れられなかったとも言っていた。

 それで迷ったとも思えない。

 まるで、この森から出たくないかのように彷徨(うろつ)いている。

 それほどの違和感がこの少年にはある。

 おそろしいくらいに綺麗な顔立ちにも驚いた。

 何よりも、少年の言動にカイルの疑問は募るばかりだ。