「うぐっ!?」

 男は胸に軽い衝撃を感じて立ち尽くす。

 深々と突き刺さっているナイフを見下ろし、ゆっくりと後ろに倒れた。

「まったく。とんでもない船旅だ」

 ようやく終わったとへたり込み、深い溜め息を吐く。

「あ、ありがとう」

「ああ、無事で良かったな」

 駆け寄った船員に笑みを見せ、薄らいでいく視界に血まみれの腕を見つめる。

「やべぇな」

 どうにも力が入らない。

 まあ、一人でよく頑張った方さ。

 誰かが褒めてくれたらいいけどな。

 あいつは怒るかもしれないが、怪我人には優しくしろよな。

「おい、大丈夫か! おい!」

 船員の声に休ませてくれとつぶやいて、カイルは意識を遠ざけた。