船員は助けてとも言えず、恐怖を貼り付けた顔でカイルを凝視していた。

 自分さえ犠牲になればみんなが助かる。

 でも死にたくない──そんな思考がぐるぐると頭の中を駆け巡っているのだろう。

「ハッタリだ」

 普通、そんなことをわざわざ言うか!?

 脅しだ。出来る訳がない。

 そう思ってはいても、カイルの鋭い眼差しがたまらなく怖い。

 こいつならやるかもしれない。

 こいつならやる。

 死んでたまるもんか!

「うわあー!」

「うるせえな」

 男の叫び声に顔をしかめ、立て続けに浴びせられる銃弾に当たらないようにと体勢を低くしてナイフを手にタイミングを計り、今度は外さないようにと慎重に走らせる。