──カイルは焚き火の炎を確認し、静かな寝息を立てている少年に視線を移す。

 森の中ではこの服の方が動きやすいため着ているだけだが、少年はカイルの服に一瞬、怯(おび)えた目をした。

 武装している奴らにでも追われているのだろうか。

「教えてくれそうにはねぇな」

 寝付く前にいくつか質問してみたものの、少年は口をつぐんで何も答えようとはしなかった。

 よほど人には言えない事情があるのか。

 無理に聞くのも大人げないし。

 警戒されたらそれこそ聞き出せなくなる。

 思案して唸りながら薪(まき)を一本、火にくべた。

 毛布にくるまり、体を丸くして寝ている少年の顔は苦悩の表情を浮かべている。

 グレーのパンツに白いスニーカー。

 そして、前開きの長袖シャツは薄手で木の枝にでもひっかけたのか、あちこち破れている。

 あまりに軽装だ。こんな森の奥にいる恰好じゃない。