たゆたう波の終わり

 ナイスまごつきとカイルはテーブルを飛び越えて素早く駆け寄り、ハッとした男の腹に膝蹴りをお見舞いした。

 痛みで前屈みになった男の右手を掴んで腕に膝を食らわせ、落ちたマシンガンを蹴って遠ざける。

 反撃しようとした男の背後に回り込んで掴んでいた男の右腕を後ろに回し、床に倒して右腕を思いきり押し上げ肩の関節を外した。

 ゴキンという音がして男は悲痛な叫びを上げるも、カイルはひと仕事終えたと立ち上がる。

「まったく。折角の船旅が台無しだ」

「あ、あんた。すげえな」

 おどおどと歩み寄る男の手にある、投げ渡したハンドガンを見下ろす。

「どうして撃たなかった」

「あ、俺。銃は持ったことがなくて」

 まじかよ。いや、もちろんアメリカにいたって一生持たない奴はごまんといる。

 しかし、この状況で引鉄(ひきがね)にすら指を掛けないっていうのはどうなんだ。