──食べ終えた少年は立ち上がり、ペコリと頭を下げる。

「ありが、とう、ございます。森の出口を、教えて、頂けませんか」

「で、どこに行くつもりなんだ」

 少年はそれに答えない。

 家に帰るとか親が心配しているとか、そういうことを一切口にしないということは、家出もしくは本当に帰る家がないか。

 嘘を吐く余裕も意識もないようだ。とにかく、普通じゃない。

「寝ていけよ。疲れてるんだろ」

「いえ、しか、し」

「ガキのくせに、いちいち遠慮するね。俺が火の番しててやるから。それなら怖くねぇだろ」

 ベリルは戸惑いの表情を浮かべる。

 カイルは少年の様子から、何かから逃げているのだと感じた。

 それ程に、この少年は周囲の気配を探っていたからだ。

「ほら」

「あり、がとう」

 投げ渡された毛布を受け取り、躊躇いつつも土の上に寝転がった。