──ベリルが旅立って数日後
カイルは船旅でも楽しもうかと、荷物を積んでピックアップトラックに乗り込んだ。そうしてフェリー港に到着し、停泊中の船を見やる。
受付に向かい、豪華客船とまではいかないが、五日ほどかけて海上を渡るローパックスフェリーの手続きを済ませた。
日本では聞き慣れない名称だが、近年では多様な車両すべてを運ぶ船はローパックスフェリーと呼ばれる。
船で渡り、帰りは車を走らせて戻る計画だ。
「ああ。お前も楽しんでこいよ」
ベリルに告げて車を車輌甲板に積み込む。固定された車を確認して客室に向かった。
空いていた一等客室を申し込んだ甲斐がある。
普通のホテル並の造りに満足し、荷物を二つあるベッドの一方に投げ、もう一つのベッドに体を横たえた。
適度な弾力に顔をほころばせ、これからの船旅に期待を寄せる。



